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聴こえる vol.13
秋に入った。
見下ろす町は澄んでいて、遠くまで見渡せる。
でもこの町に晴香はもういない。
はるかとハルカは一人になった。
もともと一人だったんだから、自然な結果だ。
一人になった晴香は、優しいだけのはるかじゃなく、突っぱねるだけのハルカじゃなく、ハッキリしてて、だけど笑顔が人を惹きつける、そんな女の子になった。
〔落とした声を、拾いに行くの〕
彼女のさよならの言葉は、とても笑えた。
なんだか可愛くて、笑ってしまった。

すぐこの前のことなのに、時々あの夏は自分の妄想だったんじゃないかと思う。
それを現実だと毎回教えてくれるのは、いつも隣にいるRBの青い両目だ。
君の隣が晴香じゃなくてごめんよ。
彼女が帰ってくるまで、辛抱な。
そう呟くと、初めて尻尾を振ってくれた日のことが、なぜか忘れられない。
「俺、お前が嫌いだったはずなんだけどなぁ」
苦笑いしながら彼の頭をくしゃっと撫でる。


「ゆーちゃん」
振り向かなくてもマサルだと判る。
『親友』だなんて、口だけのものだと思ってたんだ。
『友達』なんて、表面だけのものだと思ってた。
高熱をだしたあの日から、俺は何かを吹っ切ってしまった。
後ろ見たって、届かないものをねだったって、何が得れるんだろうか。
少なくとも俺は、何も得られなかった。
そう、得られるはずのものさえ見逃していた。
なんて馬鹿だったんだろう。

ねぇ、マサル。
「俺、3年のときのマサルがいてくれたから、今笑ってるんだと思うよ」
オレンジ色に染まり始めた町を見ながら彼に言う。
「違うよ」
マサルは呟いた。
「僕ね、姉さんがいたんだ。僕の2つ上で、近所でも仲がいいって評判だったんだよ」
そう言って少し笑った。
「でも、姉さん病気で死んじゃってさ。もともと身体とか強いほうじゃなくて、風邪とかよくひいてたんだけど。ある日いつもの風邪が肺炎になってね。あっという間に、死んじゃった。朝は、笑ってたのになぁ」
だからあの時、俺が風邪ひいて咳がひどかった時、あんなに心配したんだ。
俺は何も言わず、マサルと同じように町を見下ろしながら、じっとマサルの話を聞いてた。
「家にいても、学校に行っても、公園で遊んでも、何処に行っても姉さんの思い出ばかりで、毎日姉さんのこと思い出してた。そのうち学校にも行かなくなって、自分の部屋にばっかいるようになっちゃって・・・。引っ越してきたの、そのせいなんだ。本当は父さんの転勤とかじゃなくて、僕が外に出れるように。姉さんのことばっかり思い出さないようにって。だからこの町に引っ越してきたんだよ」
マサルがこっちを向いた。
「そしたらね、ゆーちゃんがいたんだ」
「?」
満面の笑みで、マサルは喋ってた。
「初めて見たとき、ゆーちゃん天使みたいだった。もし天使が本当に存在するなら、ゆーちゃんみたいだと思った。全身真っ白で、すっごくきれいだと思ったんだよ?姉さんもこんなにきれいになってるんだろうなって思えて嬉しかったんだ。たとえそれが現実じゃないって解ってても・・・。」
ふっと視線を空に移す。
「ゆーちゃんさっき言ったよね。僕がいてくれたから笑えるようになったんだ、って。あれね、違うよ。僕はゆーちゃんがいてくれなかったらここにはいないと思う。こうやって町を見て、気持ちいいなって笑ってなかったと思う。だからね、ありがとう。ゆーちゃんがいてくれて、ありがとう」
正直、驚いた。
マサルがそんな風に思ってたなんて。
天使?ありがとう?みんな変だって、気味悪がるだけだったのに。
そんなこと思うのマサルだけだよ。マサルは変だ。
そう言ったらマサルは笑った。
「そうかもね。僕たちきっと、変どうしなんだよ」

青い空に雲がきれいだ。
白い雲。
そういえば、白をきれいだと思ったのは初めてかもしれない。
きっとマサルのおかげだ。晴香のおかげだ。
横にいるRBを撫でながら、俺は笑った。
「うん、変同士だ」


晴香が帰ってこればいい。
今度はちゃんと、彼女の声を聞くから。
頭じゃなくて、この両耳で、この心で聴くから。
晴香が帰ってこればいい。


新しいこともいっぱい知るだろう。もっとつらい経験だってするだろう。だけど大丈夫。
それまで俺たち、二人と一匹で、君を待ってる。






                                                ─聴こえる end─


【2007/12/31 23:40】 | 『聴こえる』(リレー小説) | コメント(0) | page top↑
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